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昨年の暮れに、高校演劇を観てきました。私のワークショップなどに参加された演劇部の顧問の先生や、若い世代を指導している先生方から指導方法についてよく質問を受けるからです。どうお答えしてよいのか、一度観ておきたかったのです。
友人の愛娘が出演したその劇(高校演劇では「芝居」ではなく「劇」と言っています。私としては、非常に新鮮です)は、演劇部の部長さん(顧問の先生ではなく)がある戯曲を元に、演出をしたそうです。
この一本を観ただけで、高校演劇を決め付けるのは、絶対的に良くないことだとは思いますが、私としては非常に考えさせられてしまいました。高校という教育の場で、将来演劇人になるかもしれない人達に、何を一番伝えて行ったらよいか、顧問の先生方が、どう指導して行ってよいのか悩むのは当然だと思いました。
加瀬メソッドは、一生を通じて基礎になるメソッドです。高校生の皆さんにも、是非取り入れてもらいたいものです。実は加瀬メソッドは身体づくりや発声だけではないのです。芝居や歌を歌うための基礎的なメッソドもあるのです。
表現に関してのレッスンは、今まではスタジオだけで伝えてきましたが、これからは少しずつ外部の人達にも伝えていかなければと思いました。これから不定期に、高校演劇に焦点を当てた、芝居の基礎づくりを掲載していきます。
<2004年1月11日 加瀬玲子>
● 高校演劇 2 ——芝居には色々な世界がある
劇団の研究生になるのは、少なくともそこの芝居が好きだったり、座付き作家の戯曲や演出、所属の役者が好きで、自分の意思で選んで入って行くものだと思います。一方高校はほとんどの場合、自分の学力や校風で選んで入るためその学校の演劇部に入りたいというよりも、漠然と芝居がしたい、好きだという理由で演劇部にはいる生徒達が多いのではないでしょうか。
自分が意思を持って入団した劇団であっても、中に入ってみると思っていたものと違い、別の劇団を受け直す人達も山ほどいます。でも、学校の演劇部をやめてしまったら、後に残された高校生活の時間、芝居を作る世界から遠ざからなければなりません。そして、その演劇部がたまたま自分に合わなかったのではなく、演劇そのものがつまらないものだと思い込んでしまう可能性もあるのです。
高校の演劇部は、年齢も若く観劇の経験も浅い生徒達が、自分の好きな演劇が何であるかを3年間かけて探る場所のような気がします。
私の勝手な意見ですが、高校に限らず、学校は色々な知識や世界を見せてくれて、その中から自分が何が好きか、何を勉強している時が楽しいかを、探す場所だと思っています。ですから具体的に芝居でいえば、顧問の先生や一生徒の趣味だけで作品を選ばないで貰いたいと思います。生徒達には、芝居には色々な世界があることを知って欲しいのです。基礎的な稽古とは別に、作品選びは重要なことです。
<2004年2月2日 加瀬玲子>
● 高校演劇 3 ——高校生の身体
高校生は一般的には、15歳から18歳というまだ成長期にいます。声帯を含めた肉体は、個人差があるにしても、22歳位まで成長すると言われています。肉体も声帯も色々なホルモンの影響を受けて成長しています。まだ、この年齢だと未完成なのです。
子供の頃のことは、大人になってから覚えたことよりも、忘れないでよく覚えているものです。成長期に覚えたものは、身体に記憶されるのです。間違った使い方でもです。ですから末端の形を覚えるのではなく、本質的なベーシックな部分を大事にしてください。そして身体も心も柔軟なニュートラルな状態を作ってください。
ところで、芝居に限らず“表現”は、一種の集中力であり、瞬間芸だと思います。若い世代の表現を素敵だなと思う時がよくありますが、それは理屈ではないありったけのパワーが出ている時です。何年も芝居に携わっているとなかなかこの瞬間芸が出せません。長年やっていて出る瞬間芸もありますが、それはテクニックが伴ったちゃんとした表現です。
こう話すといかにも体育会系のような頑張りを思ってしまうといけないので、付け加えておきますが、決して、大げさな表現や大声で泣いたり騒いだりする芝居が瞬間芸ではありません。私の言う瞬間芸とは、末端ではなく、心と身体の表現が一致したエネルギッシュなものなのです。それを出せるのが成長期の身体の特権なのです。
(——続く)
<2004年2月17日 加瀬玲子>
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