緒形拳さん
私、加瀬玲子が、芝居に関わるようになりたいと思ったのは、私が11歳のときのこと。1966年NHKの大河ドラマ「源義経」の故・緒形拳さんの演技がきっかけでした。緒形さんの「弁慶の立ち往生」を観て、芝居ながら、人を守るということは何と貴く美しいものかと思いました。そして約束を守ることの大事さや、人を何があっても裏切らない、自分が決めた事は最後の最後まで貫き通す、それらを学んだのです。
こんな子供の私の心をそれだけ動かすことのできる芝居というものはすごい。そしてそのときからの思いを貫き、現在に至っているのです。
緒形さんは、1995年の舞台『リチャード三世』のリチャードを演じるために、初めて私のレッスンを受けにいらっしゃいました。あのあこがれた役者を私が教えることになる! 本当に嬉しいことでした。それ以来亡くなるまでの13年間、本当の最後の最後までお付き合いさせていただきました。私が初めて出会った最高の役者にここまで関われた事を心から嬉しく思います。
緒形さんは私に沢山のものを残してくださいました。そして、これからも私は人に教えていくことで、緒形さんが残してくれた財産を生かしていこうと思っています。