役者が日舞を稽古する意味
肉体表現は教わってすぐにできるものではありません。身に付いていない事は身体が自然に反応しないからです。
要求された事を自分でこなしているつもりでも、身に付いていない動作は、頭で覚え考えて動くため、芯からではなくて末端の動きになってしまいます。役者はその人物を演じているのだから、その人物の動きでなければなりません。不自然な動きは興醒めです。
日本舞踊を習得する良さは、時代劇だけではなく、現代劇にも表れます。その人物の上品さや力強さ、また逆に荒々しい動きでも、日本舞踊の所作を習得し、身体の使い方を理解する事が表現に繋がります。そこに、身に付いた自然な動きが出るのです。
また、私の危惧している事の一つが、日本人として、世界に誇れる所作ができる役者が少ない事です。昨今は海外の作品の日本人の役に、変な日本人が出て来るのではなくて、本物の日本人が出演しているのを観ます。とても良い事だと思っています。もし、海外の作品に出演できる、そんなチャンスが訪れたら、日舞の稽古で身に付いた優雅な、または力強い姿を堂々と披露できる。そんな役者になって貰いたいと思っています。