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クリッピング講座・レッスン

第二回芝居づくりワークショップを終えて

今回は木野花さん作「夜の森」をテキストとしてワークショップを行ないました。この「夜の森」は精神科に入院、通院している心を病んでいる人達が、治療の一環として「星の王子さま」を上演しようとする、ドラマセラピーのお話です。非日常に思える精神病棟内で起きる出来事が、実は私達にとっても、とても身近な出来事や心の動きなのだと、稽古を進めていくうちに参加者の人達は気づいていきました。最後にはこのワークショップ自体がドラマセラピーになっていったのです。

昨年のワークショップでは全体を通すことで見えてくることを大事にしましたが、今回はシーンを抜いて稽古をしました。台本を深く読み込むことにより、なぜ、どうしてそのシーンがあるのか、どこと繋がっているのか、人物像はどうなのかなど、非常に基本的なところを丁寧に稽古したのです。その結果見えてきたのは、実は役者その人自身だったのです。参加者一人一人のテクニックだけではなく、性格や考え方、経験などが芝居に出てきたのです。

皆さんが個人的なダメによく耳を傾けてくれて、それぞれの課題に最後まで前向きにトライしてくれました。立ち稽古に入ってからはビデオに毎回撮り、我が身を客観的に観ることでダメの意味を理解してもらいました。ベテランの役者でもこのような稽古は初めてだったそうです。自分の妙な癖や、演っているつもりでも思いのほか、表現として成立していないのを実感したようです。

ちょうどワークショップの期間中に映画「精神」が上映されていました。その中で山本先生は患者に決してこうしなさいと言うのではなく、「それでどうしたいの?」と問いかけます。まさに私が常に役者や歌手の人達に投げかけている言葉です。役者や歌手に何をしたいかがなければ、私はそれを教えることはできません。やりたいことがあって初めてどう演ったらそれが演技として成立し、人に伝わるかを教えることができるのです。

今回の参加者は稽古を通じて自分はどうしたいかを模索しました。自分が見つけたものに向かって日々の稽古です。自分のしたい表現のできる肉体と心を造っていくのです。

今回のドラマセラピーが、これからの皆の表現に役立つことを期待します。

<2009年9月1日 加瀬玲子>

これは2009年のクリップです。終了した内容やリンク切れの場合はご容赦ください。

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