軟口蓋を上げる?
二日間の短期集中・発声講座が終了しました。10時間の予定でしたが、皆さんの集中力がよく、たくさんの質問もいただいて、時間をかなりオーバーしてしまいました。皆さんお疲れさまでした。
参加者の職業や年齢も幅広く、下は14歳の女優を目指す中学生から、上はボランティアで読み聞かせをしたいとお考えの50台半ばのライターさん。アナウンサー、役者、教師、教員試験に合格した緊張症の方、などなど。既に声を使う仕事をしていらっしゃるか、目指している方々が真剣に参加して下さいました。
今回の講座で特に感じたことは、解剖学上の知識や理解は以前より深まっている方々が多い中、いまだに間違った使い方を教わって、マイナスになってしまっていることです。そのなかで特に気になったことを一つだけここでお伝えします。
それは、「発声するときは軟口蓋を上げる」と思っている(そう教わった)方が多いことです。
軟口蓋は意識して上げるのではなくて、ちゃんと母音が発声されていたら、自然に上がるものです。しかも上がり方は皆さんが思っているような上がり方(丸くドーム状に上がる)ではなくて、ちょうどセンターの辺りが尖った山なりに上がるのです。
「あくびをするように」ともよく言われますが、そのように上げるのは声を籠らせたり、少しでも太い低音色を出すときの表現の一部にすぎません。普通に喋ったり、歌ったりするときにそんな使い方をしたら、変な人です。
参加者の一人(大学生)から「軟口蓋を上げろと習ったのだけれど」と質問を受け、実際に上げて発声してみてもらったところ、本当に籠った変な声になり参加者一同納得。そこで私が発声しながら口を開けて皆さんに見せると全員がさらに納得。軟口蓋が上がった形を見て、認識や想像との違いを実感してくれました。
軟口蓋と硬口蓋は発音にも非常に関与しており、口の中に無駄な力がかかることで、声の響きだけではなく、滑舌も悪くなります。
軟口蓋は上げるのではなくて、上がるのです。
<2015年2月4日 加瀬玲子>
これは2015年のクリップです。終了した内容やリンク切れの場合はご容赦ください。