『ボヘミアン・ラプソディ』を観て
昨日、待望の『ボヘミアン・ラプソディ』を観てきました。
私は、フレディ・マーキュリーの歌、声、表現力の豊かさに若いころから魅了されています。また、ヴォイストレーナーの私に「どうすればフレディような声になれるのか」と多くの人から質問もされてきました。
お答えしましょう。彼の声はあの胸の厚さ、硬口蓋の深さ(映画のシーンでも出てきますが)、顎、おでこ、頭の形、腰の太さ、腹筋の強さ、全てがあの声を作り出すための最高の身体、楽器で、その最高の素材を生かし切った声なのです。
残念ながら、天性に持ち合わせていない人たちがどんなに努力してもあの肉体と声帯は手に入りません。あの声とパフォーマンスはフレディの肉体から生まれたものなのですから。
でも、声は、あなたの身体からあなたの感性とテクニックで出てくるものです。だからフレディのようにならなくても、あなたにとって、今の時点で最高のパフォーマンスが出来るように肉体と心とテクニックを磨いてください。
話は変わりますが、松任谷由実さんが紅白で歌ったのを聴いて、私は初めて松任谷さんの歌を素敵だと思いました。私は彼女の楽曲は大好きです。でも本人が歌ったのを聴いて良いと思ったことは今までなかったのです。ところが、紅白では高音部の伸びはないけれど、とても素直な、一つも嘘をつかない、ごまかさない歌に、本当に感動してしまったのです。
歌は声だけではありません。その人の生き方そのものなのですから。きっと松任谷さんは素敵な時間を過ごされてきたのだと思います。それが年を重ねることで表現に出てきたのだと思いました。ふと、フレディが生きていたら今どんな歌を聴かせてくれるだろうと思ったので。
話を映画に戻します。映画評論はプロに任せて、一言だけ。
帰り際に多分50代のご夫婦と思しき方たちの会話が聞こえてきました。
「本当にフレディは孤独だったんだな」「そうね」
違います!!! あの映画を観て、それはないでしょう。
フレディは亡くなるまで、本当に愛情豊かな人たちに囲まれていたのです。両親、妹、元恋人、クイーンのメンバー、マネージャーのマイアミ、ジム・ハットン、猫たち……。彼は自分を孤独だと思い込んでいた。でも、最後に気が付いたじゃないですか。暖かい家族や友人たちがいて、伝説のライヴ「ライヴ・エイド」で全てを解放して歌いきったのです。
世の中で孤独だと思い込んでいる人たち、周りを見ればあなたを愛し、大事に思っている人たちがこんなに沢山いるのですよ。そんなメッセージを感じた映画でした。
今年は今まで、スタジオ・レイの生徒たちにしか話さなかった、舞台や映画、ライブなどの感想を書いていきたいと思います。これも今年の変化の一つ。
<2019年1月4日 加瀬玲子>
これは2019年のクリップです。終了した内容やリンク切れの場合はご容赦ください。