再生不良性貧血とぜんそく
先日、鍼灸師を中心とする先生方の集まりに呼んでいただき、呼吸と発声と、それによる知覚についてお話しさせていただきました。
普段のワークショップや講演会では、「呼吸器というのは……」、「腹式呼吸とは、横隔膜を使って……」などなど、最低限の身体の構造の話から入るのですが、そんなことは百も承知な方々。そんな皆さんに呼吸と発声による知覚、それによって身体が改善されていくことを納得していただくには、何が一番かと考えました。
そこで、私の抱えている病気をお伝えし、私自身が実際にこの身体を、呼吸と発声でどのように維持してきたかをお話しするのが、最も具体的で説得力があるのではないかと思いました。
実は私は子供の頃からアレルギーがひどく、ぜんそくは大人になってからも重度の発作を何度も起こしています。また再生不良性貧血の病気を抱えて生きています。
再生不良性貧血は、血液を作る骨髄がうまく機能しなくなり、赤血球、白血球、血小板のいずれもが著しく少なくなってしまう病気です。難病指定の対象でもあります。
数年前、一時的に血液の数字が普段よりさらに悪くなったとき、毎月定期検診を受けている主治医の先生から、大きな病院の専門の先生を紹介していただきました。あらかじめ紹介状で私の血液の数字を知っていたその新しい先生は、診察室で私を見てびっくりした顔になり、私の身体を上から下までながめ、こうおっしゃいました。
「お元気……、ですね?」
そう、私は血液の数字からすると、一般的には考えにくいほど元気なのです。
話を戻すと、そんな私が「呼吸」に目覚めて、いかに病気と付き合い、症状を出さずに元気でいるために何を実践してきたかをお話ししました。私の話に耳を傾けてくださった先生方は、真剣に呼吸と発声の実践も行なってくださいました。
一人の先生は「撫でる呼吸」の実践の後で、ご自身の身体が楽になったと喜んでくださいました。鍼灸学校の教員もしてらして、当日は朝から何時間も講義があり、すっかり背中が張っていたところ、呼吸でとても楽になったということでした。
その先生はずっと、私の話を丁寧にメモされていました。終わってからお話ししてみると、奥様が重度のぜんそくをお持ちで、私と同じ症状や発作をよく起こされているとのこと。帰ったら今日の話を是非伝えたいと言ってくださいました。
この講演会は、素敵な先生方との出会いとなり、楽しく終わることができました。でもそれだけではなく、今までは自分の病気のことはあまり公表しては来なかったのですが、病気や、病気との付き合い方を、もっと積極的に伝えていこうと考える機会にもなりました。
たまたまこの講演会のちょっと前に、生徒の一人に難病が見付かり、彼女とはこれから定期的に勉強会を開いていくことにしました。これからこの場を使って、私のこれまで実践してきたことや、彼女との勉強会の内容を、少しずつ公表していこうと思っています。
再生不良性貧血の主治医曰く、「今こうして生きていることが奇跡なのです。」
そう言われたように、もし同じ病気、若しくは現在の医学ではなかなか改善されない病気をお持ちの方に、私の経験が少しでもプラスの材料になればと思います。
<2013年4月27日 加瀬玲子>
これは2013年のクリップです。終了した内容やリンク切れの場合はご容赦ください。