ピアニスト呼吸法
ヤマハミュージックメディアから『よくわかるピアニスト呼吸法』が発売になりました。
伊達華子先生、原田敦子先生、小倉貴久子先生と加瀬玲子との共著です。素晴らしい先生方とご一緒させて頂き、光栄です。私は、呼吸の実践と演奏前のストレッチをご紹介しています。
本の題名はピアニスト呼吸法ですが、私の紹介する呼吸やストレッチは表現者に共通のことだと思います。どうぞ、音楽に携わっている皆さん、実践してみて下さい。
私は子供の頃、近藤千穂先生という素晴らしい先生に十数年ピアノを習いました。物心ついた時にはもうピアノを弾いていて、常にピアノと共に人生を過ごしています。
近藤先生から私は沢山のことを教わりました。その中でも特に厳しく仰って下さったことは、ちょっと言葉は違ったと思いますが、
- 身体の中心線をぶらすな
- 腰を落とすな
- 腕や肩、手首は脱力
これら三つでした。
小学校何年生のときだったか、合唱の発表会で、ピアノの上手い同学年の二人が全校生徒の前で合唱曲の伴奏をしました。その二人のうちの一人に選ばれた私は、教えられたとおりに弾きました。
でも、私としては上出来だったその伴奏を、同級生が、「もう一人の方が身体が動いていて格好良かった。加瀬さんは全然動かないからつまらなかった。」と言ったのです。私は、ちょっと悲しくなり、近藤先生にそのまま尋ねました。
先生も少し困ったような顔をされましたが、「あなたは正しい。今はそんな表現はすべきではありません。大きくなって、自分が身体を使って表現したくなるまでは身体を崩して弾いては駄目です。」というようなことを仰って下さいました。
大人になってから世阿弥の「風姿花伝」の中に子方(子役)に感情を入れさせてはいけないというのを読み、先生の教えは、まさにこの事だったのだと、知りました。「型」が身について初めて感情が声や音、身体の表現に繋がるのです。
クラシックのピアニストにはならなかった私ですが、日々皆の歌の伴奏や発声練習でピアノを弾いていて、どんなに長時間になっても腕や指が疲れない(クラシックのようにハードではないということはありますが)のも、さまざまなジャンルの曲をいろんな生徒さんに合わせて弾けるのも、この近藤千穂先生のおかげだと思ってます。そして、その教えは加瀬メソッドの礎にもなっています。
脱力できることは、弾いていて疲れないということにとどまりません。そこからスタートすることで思い通りの表現に繋げられるのです。
皆さんもこの本を参考にして身体に負担がかからない、そして自由な呼吸で自由な表現を手に入れて下さい。
<2013年3月25日 加瀬玲子>
これは2013年のクリップです。終了した内容やリンク切れの場合はご容赦ください。