ペルー 1 天野博物館
ペルーは何年も前から訪れてみたい国でした。クスコ、マチュピチュ、アンデス山脈、アマゾン等々……。ナスカの地上絵って? インカ帝国って? 空気が薄いと、気圧が低いと身体への影響は? 等など、前々から想像が膨らんでいました。
その思いを胸に、昨2004年の秋に12日間の日程で旅立ちました。その、心のやさしい素敵な人たちに出会えた旅のレポートを、これから数回に分けて掲載する予定です。
天野博物館
ペルーの初日は首都のリマです。まずは天野博物館に行きました。知人から、クスコを訪れる前に少しでも知識をいれておいた方が、理解が深まるから、リマに着いたら必ず訪ねるようにと言われていたのです。
この天野博物館は、故天野芳太郎氏が個人で収集したプレインカ・インカ時代の土器や織物などを展示している博物館です。私はこの博物館、いいえ私にとっては美術館に、とにかく興奮してしまいました。今までいろいろな博物館や美術館を訪れましたが、これ程の感動は記憶にないほどです。私は感動という言葉を殆ど使いません。何故なら本当に楽しかった、うれしかったことは山ほどあるのですが、感動とはそれ以上の、一生忘れることのない衝撃です。その瞬間を思い出すだけで、幸せになれるのです。そんな経験が出来た天野博物館に感謝です。
天野博物館のテーマは、プレインカの中でも、チャンカイ文化(1,000年〜1,300年)です。土器は極端に色彩が少ない白地に黒。それとはまったく逆で、色彩豊かな織物。なぜ同じ時代のもので、こうも対照的なのか不思議です。織物は和風にも、現代の最新デザインにも見えます。この素晴らしい織物が、今の時代に風化せずに見られるのは驚きです。布の多くは、ミイラに巻かれていたそうです。ペルーの海岸沿いは極端に雨が少なく砂漠地帯が多いのですが、アンデス山脈という6,000メートル級の山々に囲まれた土地だからでしょうか、びっくりしたことに空気には湿気があり、喉がさほど乾燥しないのです。この砂漠の乾燥した土の中にありながら、適度な空気の湿気により、ミイラも布も良い保存状態を保てたそうです。成る程納得です。
土器に関してはとにかく山ほど語りたいです。そこを我慢して少しだけお話しすると、とにかくキュートで、純粋。何て素直な心をそのままに表現しているのだろう。この土器を作った人達はとても平和で、争いごとなどない。虚栄心・不遜・見栄・などというのは言葉さえもなく、想像もできないのではないかと思います。多分この時代の人達もかなりのテクニックはあったと思います。でもそのテクニックを使って諂うことは一切せず、こんなことしてみたら面白いかも、こんなの可愛いかもと思い、愉しみながら創ったに違いありません。私は、最初にこの土器達を見て、思わず笑ってしまいました(他のお客様にはひんしゅくでした)。見ているだけで本当に愉しいのです。
天野博物館には、チャンカイ文化の土器だけではなく、他の時代のものも展示されていました。それぞれの土器にそれぞれの主張があり、とにかく飽きない。いつまででもここにいて、時間を過ごしたい。いさせてもらえる時間だけいさせてもらいましたが、ホテルに帰ってからも興奮が続いて収まりません。今回の旅の最終日にリマで1日時間があるので、その時に再訪することにしました。
<2005年3月15日 加瀬玲子>
これは2005年のクリップです。終了した内容やリンク切れの場合はご容赦ください。